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奴隷への階段 第1回

2014年02月17日 18:11

【マニアック・アーカイブス】として、数年前に発行した雑誌に掲載させて頂いたマニアックな小説を数回にわたり連載させて頂きます。

【マニアック・アーカイブス】の第一作は目は、
作/縄次郎氏 絵/かおる氏の、書き下ろし女囚小説『奴隷の階段』を全5回にわけて掲載します。





■新たな獲物

 奈緒子は、誰もいない応接間の一人には大きなソファーに、やや緊張した面持ちで腰を浅く身を立てるように座っていました。つい先ほど、佐伯プロダクションのネームを胸につけた事務の女性が来て、お茶を置いていきました。奈緒子は、落ち着こうと一口飲みました。
 やっと、ここまでたどり着いた。
 今、奈緒子は、そんな気持ちでした。これまで、自分の気持ちに素直になれず、なかなか実行に移せず、ぐずぐずと先延ばしにしていたことに、やっとふんぎりをつけて、一通のメールを佐伯プロダクションに送信したのです。しばらくして返信があり、面接を受けることになりました。
 奈緒子は、今こうしてプロダクションの応接間に案内され、まもなく来るという担当者を待っているのでした。
『あなたも、芸能プロダクションで女優を目指してみませんか?』
 奈緒子は、佐伯プロのホームページを時々開いて見ていました。
【急募! 縛られ女優】
 少し前にこの記事が再び載り始めたのです。詳しい内容は載っていませんでしたが、その短い文字の呼びかけに応えるように、自分をその役柄に投じてみるのでした。それは、決まって囚衣を纏っていました。市中を縄付きで曳き回される奈緒子、牢屋の中の奈緒子……でした。そんな自分を想像すると身体が火照ってくるのを感じました。子宮の奥深くでくすぶっていた血が呼び覚まされるのを感じました。じっとしているのももどかしいほどでした。何故、そうなってしまうのか。それは、ある日突然にやってきたように思いました。遠い昔に見た時代劇で、悪い盗賊たちに攫われ、縛られたまま、石でできた牢屋に閉じ込められるお姫様を、奈緒子は、画面を通してじっと見つめていました。見終わったあと、奈緒子は思いました。

1-M女図鑑1
(このドラマのお姫様になりたい)
 でも、どうすればお姫様になれるのかが小さな子どもには分からず、その思いをずっと持ち続けてきたのです。女優を夢見て高校から演劇部に籍を置きましたが、大学を卒業するとともに演劇と関わることをしなくなりました。自分に素質のないことに気づいて就職しました。でも、小さいときに持った思いは
そのまま残りました。どうすればいいのか分からず、もんもんと時間だけが経っていきました。
 奈緒子は、興奮気味に佐伯プロに宛てて応募のメールを作成しました。読み返して、いざ送信ボタンに触れようとしたとき、指が震えました。
(もう、邪魔をしないで。この機会を逃したら、また一年、待たなければならないの。私は、二年も待ったの。もう待つのはいや)
 この二年、奈緒子の心に宿る理性が邪魔をしていました。奈緒子が目指したのは「縛られ女優」初めてこの募集を見たときは、思いが通じたと、思わず嬉しくなりました。でも、その後すぐに、好奇なたくさんの他人の目があることを想像しました。そして、この募集記事に軽蔑の目を向けている女性も多いに違いない。そういう女性が圧倒的に違いない。そんな考えが頭をもたげてきたのです。
 奈緒子は「きっと……」と口に出して言いました。自分に好奇の目が、軽蔑の目が集まるのを想像すると身が慄えました。笑いものになったらと思うと怖くなりました。
(私に耐えられるの?)
 でも、この記事に心ときめかせている女性が私の他にもいるかもしれない。多いのかな? 少ないのかな? もし、私一人だけだったら……? そんなことはない? まだ女優になれるかも分からない何も始まっていないうちから様々な思いに駆られ気持ちが高鳴り、また塞いでしまうのでした。そうして二年が経ってしまったのです。
 迷う気持ちを振り払うようにクリックボタンを押しました。
 送信して数日後、返信がありました。
『水島奈緒子様。ご応募、ありがとうございました。お話しをお伺いしたいので、ご足労ですが、当社までおいでいただけますでしょうか。日時は……。』
(ああ、やっと、思いが叶うのね)
 奈緒子は、いとおしいものを見るようにパソコンの画面を見つめました。そして何度も、返信されてきたメールを読み返しました。そこには自分の名前があり、自分に呼びかけた文章がありました。奈緒子は、身体が熱くなりました。
「やっと思いが叶う」
 もう一度呟きました。画面に見入りながら、そっと、秘部に指を触れました。
「あっ……」
 身体が、びくん、と跳ねました。
『日時は……』
 その日には、一週間ほど待たなければなりませんでした。
(そんなに待たされるなんて……いじわる)
 奈緒子は、もう女優になった気でいました。時間が飛んで、すぐにもその日が来ないかと、やきもきしました。
 奈緒子は、熱く火照っていく身体をどうすることもできなくなっていました。すぐ横のベッドに身を横たえると、指に力を込めて秘部を刺激しました。びくんと、体が震えました。喘ぎ声が、部屋中を駆け巡りました。やがて事が済んだとき、奈緒子の身体から汗が噴き出て、着ているものが、汗でべったりと肌にくっついていました。

 ドアがノックされて、背広を着た男性が、「お待たせしまして、すみません」
 と言いながら入って来ました。そして、奈緒子と反対側のソファーに腰を下ろしました。
「私は、芸能部の神崎といいます」
 そう言って差し出した名刺に、チーフマネジャーとありました。
「来ていただけるのか内心、不安だったのですよ」
「……」
「仕事内容の問い合わせが多く、お話しすると尻込みする方が多くいまして。そうでなくても、お会いする直前になって応募を取り消してくる方も多いんです。あなたのようにこうしておいでくださる方はまれなんですよ」
「……」
 奈緒子は、話しを聞きながら好奇な目で見られているようで恥ずかしくなりました。
「不安はありませんでしたか?」 
「いえ……はい」
 どう答えていいのか分からず、曖昧な返答をしました。神崎は、奈緒子が返信した資料を見ながら言いました。
「役者に興味がおありなんですね。演技のご経験は?」
「学生のとき、演劇部にいました」
「学生というと、大学?」
「高校からです」
「今は、そういった活動はしていないのですか?」 
「はい」
「年齢は26歳、独身。お一人でお住まいですか?」
「はい、両親は、二人とも亡くなって、兄弟姉妹(きょうだい)もありません」
「ご親戚は?」 
「付き合いはありません」
「お勤めの会社を退職されて応募なさったとありますが、今は?」 
「何もしていません」
「覚悟の応募ですか。良い返事を差し上げられないかもしれませんよ」
 奈緒子は、一瞬、戸惑いました。返信をもらったことで舞い上がり、不合格になることなど考えていませんでした。
「それは……」
 奈緒子は、あたふたしてしまいました。と、突然、聞かれました。
「何かで身体を叩かれたことはありますか」
「……手で、お尻を」
「それは、いつ頃のことですか?」 
「小さい頃、叱られて……」
「それだけ?」 
「……はい」
 神崎は、彼女の気持ちを量るように話しをしました。
「例えば、女囚の役では、先が割れた竹で叩かれることもあります。演技ですから、手加減はするでしょうが、時には演技に熱が入って本気で叩くこともあると聞きます。すると肌が傷つきます。また、撮影前に縄で縛られ、吊られたまま長時間、放っておかれることもあります。つらいですよ。腕が痺れるだけでなく、感覚もなくなって激痛に見舞われることもあります。拷問のシーンなど、その方が表情に迫力が出るんです。一部ですが、他にもいろいろと大変な思いをなさると思います。けして、楽な仕事ではありません。ある意味、覚悟のいる仕事です。こうして、女優と分けて募集しているのは、その役どころが特殊だからです」
 ややあって、「できますか?」 と、神崎は、奈緒子を見つめました。その言葉が彼女には重く感じられました。いっそ、「やってくれますね?」 と言われたほうが楽でした。奈緒子は、自分に答えを求められ、一瞬、返事に窮しました。でも……。
「……はい」
 と返事をしていました。
 その声は震えていました。
「それでは、演技経験がおありということですし、少しレッスンを積んでみましょう。その上で、お任せできるかどうか、最終的にお返事いたしましょう。よろしいですね」
 奈緒子は、ホッと胸を撫で下ろしました。でも、それと同時に、これで良かったのかと不安も沸き起こりました。
 神崎は、今日は一旦帰って、明日また来るようにと奈緒子に言いました。
「しばらくは、私どもで用意した寮で生活していただきながらレッスンを積んでいきますから、着替えなど、身の回りのものを持って来てください」
 奈緒子は丁寧に頭を下げ会社を出ました。

■牢屋の中の生活

 奈緒子は、しばらく戻らない部屋をきれいに掃除した翌日、再び佐伯プロダクションを訪れました。演技力を見るということでしたが、仮契約書に記入、捺印の後、神崎とエレベーターに乗っていました。
 エレベーターは、下に向かっていました。やがて、1階を通り過ぎてBの文字に明かりが灯りました。
 神崎の背中が邪魔をして、奈緒子には、扉の横に取り付けられた文字盤が見えませんでした。神崎が、どの階を押したのか分かりませんでした。でも、頭の上にある横に並んだ数字にスポットライトのように明かりが移動して、地下に入ったことを告げていました。
(どこまで下りるの?)
 数字は、地下3階まで表示していました。奈緒子に不安がよぎりました。エレベーターは、B2階で止まりました。扉がスーッと横に開くと、薄汚れた壁が目に入りました。
「さあ、降りて」
神崎に導かれて、奈緒子はエレベーターを降りました。一本の通路が左右に延びていました。そこに、薄暗く、どんよりと重い空気が漂っていました。そして、音らしい音を聞くことができませんでした。
「ここは……?」 
 奈緒子は気味が悪く、先を歩く神崎に遅れまいとついていきました。でも、どこまで行っても薄暗く静かでした。喧騒に慣れた奈緒子には、この静けさが息苦しく、また落ち着きませんでした。一人になるのが怖く、必死に神崎の背中を追いました。どこをどう歩いてきたのかさえ分からなくなりました。その間、左右に幾つかの鉄の扉を幾つか見ました。しっかりと閉じられ、触れることさえ怖いくらいでした。
(ここは、いったい……?)
「さあ、着きましたよ」
 先を歩いていた神崎に、いきなりそう言われて驚きました。正面に追いやられ立たされた奈緒子は、「えっ?」と言ったまま立ち尽くしてしまいました。
「これは……」
 すぐ目の前に鉄格子がありました。その向こう側は、人が二人入れるほどの小さな部屋でした。三方が壁で、レンガを積んでセメントで塗り固められていました。隅に、毛布が一枚、丁寧にたたまれて置かれていました。物と言えるものはそれだけでした。
「今日から、ここで生活してもらいます」
(えっ?)
 耳を疑いました。
(……ここって。嘘でしょ?)
 扉には、鍵がぶら下がっていました。奈緒子は、とたんにうろたえるのでした。
(ここに足を踏み入れたら、私どうなるの?)
 二度と表に出られないのではないか。誰からも忘れ去られ、二度と陽の光を見ることなく、一生をここで暮らすことになりはしないか……。奈緒子は、怖くなりました。
「縛られ女優を目指すあなたに相応しいお部屋だと思いますよ」
 そう言った神崎の口元がにやりと笑いました。それを見た奈緒子は、足がすくみ、動けなくなりました。
「どうしました?」 
「……い、いえ」
 奈緒子が突っ立ったままでいると、いきなり神崎の大きな手の平が奈緒子の背中をグッと押しました。
「あっ」
 奈緒子は、つんのめるように室内に身を投じました。膝から落ちるように、コンクリートの床に手を着きました。
「何をするのですか!」
 慌てて後ろを振り向くと、神崎が鉄格子の扉を閉めていました。そして、南京錠をかけるのを見ました。
「どうして、鍵をかけるのですか!」
 奈緒子は、蒼くなりました。まさか、ほんとうに錠をかけるなんて……。
「あなたは、普通の女優を希望して、ここを訪れたのではないはずです。これで、あなたは囚われの身となりました」
 囚われの身?
「あなたは縛られ女優として歩き出したのですよ」
「私をここから出してください……」
 奈緒子は、神崎に訴えました。
「それはできません。明日から、レッスンを受けてもらいます。そのレッスンが終えるまでは、ここから出すわけには行きません。レッスンは、あなたがこれまで経験したことのないことばかり起こり、驚かれるでしょうが、縛られ女優として生まれ変わるためと思って耐えてください」
 そう言って、神崎は奈緒子に背中を向けました。
「私を一人にしないでください!」
 奈緒子は、焦りました。こんな暗く気味の悪いところに、たった一人残されたくありませんでした。一日いたら気が狂ってしまうと思いました。彼女は鉄格子を掴むとすがるような目で神崎の背中を見つめました。
「お願い、出して……」
 神崎は、振り向くことなく奈緒子のもとを離れていきました。彼女は、もう神崎の背中を追いかけることはできませんでした。鉄格子に阻まれ、いつまでも彼を目で追っていましたが、やがてその姿が暗闇に消えました。そして、靴音だけがしました。その靴音も小さくなり、やがて聞こえなくなりました。すると、とたんに辺りが静まり返りました。
 じっとしていると、息が詰まりました。何かしようと狭い牢内を歩きました。手で、指で触れて歩きました。レンガの壁はざらざらしていました。指で押すと、痛さが指の先から手に、そして手首に伝わってきて痺れました。どんなに強く押しても、びくともしませんでした。それから床に目を落としました。ローヒールの靴を脱いで、足の裏で床を歩いてみました。「ペタン、ペタン」と音がしました。目の先に、毛布が見えました。手に取ると、カビ臭いにおいがしました。
「嫌……!」
 奈緒子は、思わず顔を背けました。放ろうとして思い留まりました。改めて、それを見つめました。
(私の寝具……?)
 毛布以外に布団も枕もありませんでした。
(コンクリートの床で眠るの?)
 いつも寝ているベッドでなく、いつも寝ているふかふかの布団でない、固い床を見つめて、ここに寝るのかと思うと悲しくなりました。
(可哀そうな私)
 そっと毛布を床に置くと、鉄格子に目をやりました。縦に入った、錆びた太い何本もある鉄格子を見つめていると、奈緒子の瞳がゆるみ、大粒の涙が一粒、頬を伝いました。奈緒子は、霞む目で鉄格子に近寄ると手で握り締めました。ひんやりとした冷たさが手の平を覆いました。揺すってみましたが、鉄の棒が外れることはありませんでした。扉もゆすってみました。錠が扉にしっかりとされていて、解けることはありませんでした。
「私は、囚われの身」
 神崎の言った言葉を反復してみました。
(……もしかしたら、私、ほんとうに囚われてしまったのかもしれない。錠までかけられてしまったのだもの。私、このまま……)
 テレビの中のお姫様は、その後、若い侍に助けられますが、奈緒子には、誰も思い当たりません。とたんに寂しくなりました。でも一方で、子宮の奥深くをくすぐられるようでした。奈緒子は、左手で鉄格子を握ったまま、下着の上から右手の指を秘部にあてがい、なぞるようにこすりました。
「ああ……」
 誰もいない地下室に、奈緒子の声が響きました。あまりに大きな自分の声に、奈緒子は驚きました。
「ああ、嫌」
 身体がカッと熱くなりました。声を殺そうと唇を噛みました。でも、それも最初だけでした。いつしか、喘ぎ声が地下室いっぱいに響き渡り、奈緒子に止めることはできなくなっていました。身もだえ、わなわなと唇を震わせると、天井を見上げたまま果てました。

■垂れ流し

 奈緒子は、いつの間にか、床に身を横たえて眠っていました。と、もぞもぞと、腰が落ち着きなく動いて寝返りを打ちました。
(ああ……。どうしよう……)
 奈緒子は何度も寝返りを打ちました。でも限界がありました。もどかしく上半身を起こすと辺りを見回しました。辺りを闇が包んで檻の外はよく見えません。そのうちに、下腹が張ってきました。
(トイレはどこ?)
 奈緒子は、鉄格子の外に向かって人を呼びました。
「すみません……」
 でも、恥ずかしさから、声が震えて思うように声が出せません。
「どなたかいませんか?」 
 もう一度、今度は大きな声で人を呼びましたが、闇に自分の声が響くだけでした。
(どうすればいいの?)
 このままでは、床に排泄するしかありませんでした。
(ああ、おトイレにいきたい)
 何度も声を外に向かって発しましたが無駄でした。
 もうだめ! 我慢も限界でした。奈緒子は、スカートをまくり、急いでパンティーを下ろすと、床に腰を落としました。直後に、一筋の液体が床に向かって放たれました。
ぴちゃぴちゃ、ぴちゃぴちゃ……静かな地下室に、音が大きく響きました。
(い、いやあ……)
 膝ががくがく震えました。まさか、こんなことになるとは想像もしませんでした。奈緒子を悩ませたのは、そればかりではありませんでした。吐き出された尿が、奈緒子の目の前で川となって鉄格子の外に流れ出たのです。奈緒子は、背筋が凍りつきました。
(誰かがここに来てこれを見たら……!?)
 でも奈緒子は、為すすべもなく、茫然と、流れ出る尿を見つめるしかありませんでした。

■置かれた立場

 濡れた床を前に思い悩んでいると、闇の向こうで足音がしました。しんと静まり返った地下にいて、その音は一瞬、恐怖でした。だんだんと足音が近づいてきました。奈緒子は、後ろの壁に背中を貼り付けるように座ると、頭から毛布をかむり、身を小さく縮み込ませました。
「何ですか、これは」
 神崎の声が、すぐそばでしました。奈緒子は、びくつきました。叱られた子どものように一層、身を小さくして怯えていました。
「おしっこですか? 床に?」 
 奈緒子は、恥ずかしく、胸が締め付けられました。
「困りますね、床を汚されては。今度から、ボウルを置いておきますから、それにしてください。毎日、朝、取り替えに来てあげます」
(えっ?)
 奈緒子は、耳を疑いました。毛布を剥いで、悲愴な面持ちで神崎に訴えました。
「そんな!どういうことですか?」
 でも、返ってきた言葉は冷たいものでした。
「トイレは必要ありません。あなたが、どうしてこんなところに入れられているのか、自分が置かれた立場をもう一度よく考えてみてください」
 そうして神崎が手にしてきた透明のボウルを見て背筋が凍りつまきました。
「ど、どうして? そこまでする必要があるの?」 
 奈緒子は、目の前のボウルを見て慄えました。それは、大きな口を開けて、いつでも受け止めますよと言っているようでした。
(い、いやっ!)
 奈緒子がボウルを手で払い除けると、転げてひっくり返って留まりました。
(消えて)
 見るのも嫌でした。でも、牢屋にいる限り、目に触れないわけには行きません。そして、実際に、日に何度も使うことになるのです。
でも、奈緒子を驚かせたのはそればかりではありませんでした。神崎は、着ている衣服を下着まで全て脱げと言うのです。
「そんな! なぜ、裸にならないといけないんですか?」 
「あなたは、蔑まされ、忌み嫌われる役もこなさなければいけません。身をもってそれを知っていただくためです。皆さん、この中で裸のまま暮らしたんですよ」
 奈緒この表情が強ばりました。
「脱ぐのですか? 脱がないのですか?」 
 奈緒子は、後ろの壁に背中を押し付けると、腕を胸で交差させて力を込めました。そして、神崎を睨みつけました。
「嫌だというのですね?」 
「嫌!」
「仕方ありませんね」
 神崎は、奈緒子にずかずかと近寄ると、無理やりに毛布を剥ぎ取りしました。奈緒子は、毛布を握る手に力を入れて取られまいと必死になりましたが男の強い力に押しやられ、毛布を剥がされてしまいました。
 そして神崎は、いきなり奈緒子が着ている白いブラウスに手をかけて引き裂きました。彼女は、叫び、身体をばたつかせましたが、神崎に組み敷かれ、為す術もなく衣服を剥ぎ取られていきました。こうなると、もうどうすることもできません。勢いのある神崎にスカートをずり下ろされ、ストッキングをビリビリに破かれてしまいました。
「いやあああ」
 奈緒子は、手足をばたつかせ、必死に抵抗しました。あらん限りに叫びました。でも、神崎は動じませんでした。
「おとなしくしろ! さもないと縛るぞ」
 神崎は、鬼のような形相で怒鳴りました。
「いやあ!」
 縛られたらもう終わりだと思いました。奈緒子は一層、抵抗を強めましたが、神崎は、赤子をひねるように軽くねじ伏せ、両手を背中に回して重ね合わせると、ポケットから絹紐を取り出して手首にからめました。
「縛られるのは嫌!」
「今さら遅いわ」
 脚をばたつかせて逃れようとしますが、馬乗りに手首を取られ、あっという間に両手首を後ろ手に縛り合わされてしまいました。解こうともがきましたが無駄でした。神崎は、両手の自由を失っても暴れる奈緒子の胸に紐を回して締めつけました。背中の紐に絡めて縄止めを終えると、神崎は、奈緒子を抱き起こしました。彼女は、足を横に流し、首をがっくりと垂れました。露わになった肩が震え、大粒の涙がぽろぽろとこぼれ落ちました。
 それから神崎は、まだ身に纏いついているずたずたになった布を剥ぎ取っていきました。奈緒子は、肌が露わになっていくのを、いや、いや、と身を揉んで抵抗しました。でも、両手の自由を奪われて、為すがままになるしかありませんでした。
 最後に、淡いブルーのパンティーが残りました。それだけは、まだ完全な形を保っていました。神崎は、最後の一枚に手をかけました。
「や、やめて。これだけは許して」
 神崎は、蒼くなり、怯える奈緒子をしばし見つめていましたが次の瞬間、一気に引き裂き、足首から抜き取ってしまいました。
「いやあああ!」
 奈緒子は、あらん限りの声を上げました。惨めな思いに唇を噛みました。
「ひ、酷い……。人でなし!」
 奈緒子は、神崎をなじりました。でも、彼は、言葉を返すことはありませんでした。散らかった布切れを拾い集めると牢屋を出ました。
「もう、こんなことは嫌。お願い! 家に帰して」
 神崎は聞こえないかのように鉄格子の扉を閉めると錠をかけました。そして奈緒子の叫び声を背中に受けながらも振り返ることなく、地下室を出て行ってしまいました。
 再び、地下室は静まり返りました。電球の弱い光が、縛られ露わになった奈緒子の肌を天井から照らしていました。両手を背中の中ほどでくくられ、乳房は、絹紐に挟まれ、締め上げられて前に突き出るようにつぶれていました。やがて、地下室に奈緒子のすすり泣く声が響きました。そして、それはいつまでも続きました。
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