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奴隷への階段 第4回

2014年04月05日 00:23

【マニアック・アーカイブス】
として、数年前に発行した雑誌に使用させて頂いたマニアックな小説を数回にわたり連載させて頂きます。

作/縄次郎氏 絵/かおる氏のの書き下ろし女囚小説『奴隷の階段』を全5回にわけて掲載します。



 数日が経ちました。その間、入浴以外、一歩も牢屋から出されることはなく、三度の食事が運ばれ、排泄用のボウルが交換されていきました。
 そんなある日、神崎が一つの知らせを持って来ました。撮影の仕事が入ったというのです。由希のデビューが決まったのです。
 彼女は、地下室を出されました。
「入浴を済ませてください。衣装を身につけたらすぐに出発します」
「どんな仕事ですか?」
「車の中で詳しくお話しします。先に入浴を済ませてください」
 由希は、何か急かされているようで戸惑いました。ちらっと今出たばかりの牢屋を見やりました。
(もう、戻ってくることはないのね)
 最初は憧れのような思いで受け止めた檻の中の生活も、屈辱的なことが続いていつしか嫌気が差しました。この数日はレッスンも、教本も読むことがありませんでした。ほんとうに、何もない時間を過ごしました。何もしないでいることがこんなにも苦しいことなのかと、身を持って知らされました。まだ、レッスンがあった日々が懐かしくさえ思えてきました。
 入浴を済ませた由希に、一枚のメモとバスローブが用意されていました。
 自分で衣服をまとうなど、いつ以来だろう? 遠い昔のように思え、懐かしいものに再会したかのようで、いとおしく思うのでした。

4-市場統合
 ふわふわした感触を、手で、頬で感じました。解放された喜びが全身を包み、嬉しさがこみ上げてきました。
 浴室の隣にメイク室がありました。
 メモには『メイク室に衣装を置いておきましたから、それを着て出てください』とありました。
 その衣装はハンガーにかけられ吊るされていました。由希は、それを見て驚きました。腰の下までスリットが入った、淡いブルーのロングドレスでした。
(これを着るの?)
 由希は着る前から恥ずかしく顔を赤らめました。そして、こんな衣装を着せられるなんて、どんな仕事なんだろうと考えました。
 ロングドレスは布が肌に張り付くほどフィットしていました。由希は、思わず姿見から視線を逸らしました。
「よく似合っていますよ。デビューのお披露目に相応しい衣装じゃありませんか」
 神崎は、そんなことを言ってくれましたが、由希はもじもじとしていました。
「それでは、車の用意ができています。行きましょう」
 そう言うと、ポケットから手錠を出しました。目の前で光る環に由希は血の気が失せていきました。
「どうして、またそんな……」
 もう、身体の自由を奪われることはないだろうと安心していた由希は戸惑いました。
「あなたは、縛られ女優です。その第一歩をこれから踏むのですから、それに相応しくこれを身につけて行きましょう。少し窮屈でしょうが、向こうに着いたら外してあげます。しばらくの間だけ我慢してください」
 促すようにする神崎に由希は、ため息を一つ吐くと、困ったような顔をしながらも言われたとおりにしました。
 由希は、後ろ手錠の姿でエレベーターに乗せられました。すぐ上の階で止まりました。そこは駐車場でした。目の前に車が止まっていて、背広を着た男が後ろのドアを開けて待っていました。車に乗ると、カーテンが窓に引かれていました。地下室の生活が長かった由希には、陽の光は目の毒だということでした。
(そんなにも長い間、あの中にいたの?)
 今はもう、見ることができない自分が暮らしていた地下牢を懐かしむようにしました。
(もう、戻ることはないのね)
 それは、地下牢を出された後の思いと違い、惜別のような思いでした。でも、そんなセンチメンタルな思いに浸っている暇はありませんでした。
 由希の座席にだけ、床に足枷が取り付けられていました。それは短い鎖で床に繋がれていました。由希は、車にそんなものが付いていることに驚きました。
 由希は、それぞれの足に枷を繋がれました。これではまるで、護送される囚人のようでした。不安になって聞きました。
「神崎さん。今日は、どんな仕事なんですか?」
 由希は、まだ仕事の内容を知らされていませんでした。
「今日は、共演される俳優の皆さんとの顔合わせです。撮影の間、ご一緒される方々を、お互いに紹介し合います」
 由希は、手錠をかけられたまま、その場に曳き出されはしないかと不安になりました。そんなことになったら、どんなに惨めだろうと落ち着きませんでした。それを察したのか、神崎は笑って、
 向こうに着いたら、すぐに外してあげますよ。と繰り返しました。
 由希は少し安心しました。でも、だったら、わざわざ手錠までして連れて行かなくてもいいのではないかと思いました。そのわけは、すぐに解けました。車が駐車場を出ると由希は晒しの布で猿轡をされたのです。
「!」
 由希は、不意に神崎が襲ってきたので驚きました。咄嗟にドアに逃げました。ジャラジャラと、床に繋がれた鎖が鳴りました。
「無駄ですよ。これから先は目隠しをさせてもらいます」
(どうして? 何故、こんなことをするの?)
 叫んでみても口をきつく封じられているので、くぐもった声が聞こえるだけでです。
「おとなしくするんだ!」
 頭を振って抵抗する由希を怒鳴り、黒い布で目を覆ってしまいました。
 由希は、手足の自由を奪われ、目も口も封じられ、もう、どうすることもできなくなりました。
 車は恐怖に慄える由希を乗せて走りました。どれほど走ったのか、がたがた車が揺れました。
(どこに連れて行かれるの?)
 奈緒子は、生きた心地がしないまま、車にゆられ続けました。
「さあ、着きましたよ」
 目隠しを解かれた時、周囲を林に囲まれた洋館の前にいました。

■奴隷市

(ここは、どこ?)
 足枷を外された由希は、後ろ手の手錠と猿轡はそのままに洋館に連れ込まれました。そして奥に連れて行かれた由希は、扉の前で立ち止まりました。その扉には鍵がされていました。
 神崎が扉の錠を解きました。ギーっという音がして扉が開けられました。
 扉の向こうに下に向かって階段が付いていました。らせん状に曲がりくねっていて、下の方までは見えませんでしたが、壁の弱い明かりが道案内のように灯っていました。
 由希は足がすくみ、がくがく震えました。
 神崎がそんな由希を促して階段を下りました。
 下り立った正面には鉄格子が嵌った牢屋がありました。中で何か蠢くものがありました。驚き咄嗟に神崎を見ました。何か言おうとしますが、猿轡で声になりません。
「あなたは、こちらへ」
 奥に連れて行かれました。通路を挟んで左右に、鉄格子が嵌った牢屋が幾つかありました。
 由希は、頬が引き攣るのを感じました。
「夜には、市が開かれます。それまで、ここでおとなしくしていてください」
 そう言うと神崎は、由希の猿轡を外しました。きつく巻かれていたので、解かれた瞬間、大きく、何度も息をしました。そうして、話せるようになると神崎に問い詰めました。
「奴隷市って何のこと?」
「夜になれば分かりますよ。それまで、ここでおとなしくしていてください。お仲間もいらっしゃいますし」
「私を騙したのね?」
 由希は、後ろ手に嵌められた手錠を解こうともがきました。でも、手首に嵌った金属の拘束具が解けるはずもありませんでした。
「そんなことをしても無駄ですよ。それよりも、あなたに紹介したい女性がいます」
 神崎は牢屋に目を移しました。そこには、膝を抱えて身を小さく縮めた一人の女が入れられていました。彼女は、何も身につけていませんでした。後ろの壁に身を寄せて、顔を膝に伏せていました。
「松下佳織さん、あなたの後輩を連れてきましたよ」
 松下佳織と呼ばれた女は、頭を上げました。
(松下佳織? ……まさか……)
 由希は信じられない思いでその名前を聞きました。そして香織がいる牢屋の鉄格子に近づきました。女性は確かにテレビで見たことのある松下佳織でした。引退したのか数年前からテレビで見かけなくなったけれど、化粧をしていない素顔で憂いのこもった目は、女囚を演じたときの目でした。
 どうして、こんなところに……。
「佳織さん、こちらは谷川由希と言います。今夜がデビューのお仲間です。初心者の彼女にいろいろと教えてあげてください」
 神崎は佳織の閉じ込められている牢屋の錠を外しました。
「さあ、入ってください」
「い、嫌……」
 身を引き、じりじりと後ずさる由希でした。
「どうしてです? 憧れの女優と一緒の檻に入れてあげようというのですよ。感謝して欲しいくらいですね」
 由希は強引に腕を掴まれ、佳織のいる牢屋に入れられてしまいました。


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