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受胎強制医院 第2回

2014年06月30日 00:53

【マニアック・アーカイブス】

として、数年前に発行した雑誌に使用させて頂いたマニアックな小説を数回にわたり連載させて頂きます。

今回は、作・花房ちか子 絵/かおる氏の書き下ろし女囚小説『受胎強制医院』を3回にわけて掲載します。





▼肛門検査

 未だに瞼は重い。瞼と言うより、体が気怠くて仕方がなかった。拘束されていては、どうせ動かせやしない。優美子は閉ざさない程度に目を細め、ぼんやりタイル敷きの床を眺めた。
 それからふと頭を過ぎった。
(……え? 拘束?)
 肌白い皮膚が僅かに視界を掠める。それが微かに揺れる。脚だ。優美子には自分が動かした膝頭が見えた。通りで肌寒い筈だ。
(……でも、可笑しいわ)
 優美子は普段、膝が見える丈の短いスカートを穿かなかった。不妊が発覚してからは、まるで自分の性を隠すかのように、露出度の低い服ばかりを好んで着た。
 もしやと、眼球を恐る恐る下へと向ける。首が動かないのだ。
リサイズ M女挿絵統合2

「ヒィィッ!」
 そこには乳房どころか、乳首があった。その二つの膨らみの間からは、臍と三角形の黒い草むらの丘。全て見覚えのある自分の体だ。そして自分の胴体と四肢の関節と関節の間を、黒い革ベルトで椅子にくくりつけられている。
 優美子は息を飲んで、自分の置かれている状況を改めて把握した。
(私、裸で……、そうだ……変な部屋に……、それで!)
「やっと、お目覚めで?」
 男が背後から姿を見せた。男は、やはり新城だった。優美子は一瞬だけ、ハッキリと男の顔を見た。すぐに天井にある剥き出しの電球の所為で、逆光になってしまったが……間違いない。
 陰りを纏う新城の手が伸びる。優美子はビクリと体を硬直させてしまった。
「……い、いやッ!」
「そんなに怖がらなくても、良いじゃないですか」
 アハハと軽い微笑をたたえ、新城は優美子の髪に触れた。恐怖に歯を鳴らす優美子に、新城は構わない。ただとても満足げな顔で執拗に髪を触りつづける。
「優美子さん、今日僕が……貴女の夢を叶えてあげるんですよ?」
「え?」
 男が自分を名前で呼んだ事に優美子は気付かない。髪から新城の手が滑り落ち、優美子を指差した。トスン。
 そこは臍のちょうど真下――子宮だ。
「子供、欲しかったんでしょ?」
 新城が何を言いたいのか、優美子には分からなかった。
(だって私、不妊症で……)
 子供なんて授かれる体じゃないはずだ。
 不仲と言っても、優美子は夫の孝太と月に一度は必ず性行為をしていた。優美子から誘う事はなかったが、ちょうど生理前にした事だってある。
 それでも妊娠しなかった。出来なかった。
「あ、驚いていますね。もしかして、言っている意味解りませんか?」
 優美子は動転し何も口に出来ず、ただ新城を凝視した。首にかかる革ベルトで動かせない首を、上下に微動させる。
「じゃあ、“不妊症なのは奥様の方でなく、旦那様の方”だとしたら……?」
“これでどうでしょう?”子供に教えるかのように言い聞かせる新城。その新城の発言は優美子の脳内に天変地異を起こした。
「うぅ……嘘、そんな……」
「僕は嘘なんて吐いていませんよ。現に貴女の体には、何処も異常がありません。ああ、そんなに泣かないで下さいよ」
 知らぬ間に女の頬は濡れていた。自分のせいでない事、自分が女であった事。今まで優美子にかかっていた暗雲が、急速に払われた。
 それでも、背中がベタつくのは……。
「なので、孕んで下さい……僕の子を」
「――キャアッ!」
 突然、座っていた椅子が傾き出す。ガタンと、背後に倒れる。驚愕に閉じてしまった目を開ければ、天井が見えた。
 そして左右には、またあの不気味な団子の壁が高らかに積み上がっていた。
「優美子さん……壁、見えますか?」
「これ……」
 気絶する前に見た、歪な壁。動く壁。
「みんな僕のコレクションです。いつもここにある訳では無いのですが……」
 新城が横にやって来て、誇らしげに囁く。
「今日は貴女を歓迎する為に、勢揃いさせてみました。」
「ヒィイィ! 痛い!」
 重力で横に流れても尚、山のある優美子の乳房を新城が鷲掴む。生理前も相俟って、張った胸が痛みで破裂しそうになった。
「感想は? 優美子さん……」
「感想って……言ったって、コレ……」
(――人じゃないの!)
 そうなのだ。壁全面に押し入れられていたのは、まぎれもなく人間だった。団子と思っていた物体は、尻だ。対を成して二つずつ、脚を折り畳まれて収納されている。
 双丘の間からチューブが伸び別の人間と繋がっている者。銀の金具で穴を開かされている者。棒のような物が突き刺さっている者。肛門だけでなく、性器までもが、その惨虐な仕打ちを受けていた。
「皆さん、優美子さんと同じ悩みで、私の下を離れないんですよ」
 声をつむげない優美子に、新城は悠々と語りだす。
「奥。上座のロッカーの方達は、今妊娠中です。下から上に、臨月の近い準備で、ロッカーの幅も広く取っています。体に負担は余りかかりません」
「両壁。上の段の方達は皆さん、僕の子を孕み産んで下さいました。勿論、僕が出産のお手伝いをしてね」
「下の段は…………あ、そこからでは見えないですよね。すみません。じゃあ先に、優美子さんの適応検査から済ませてしまいましょうか」
 それを合図に、頭上、入り口があるであろう方向から看護婦が荷台と共に現れた。
「小山内さん……」
「……」
 何も言わず会釈をし、小山内は新城の横にその器械卓子を止めた。元々婦人科のナースにしては、いささか無愛想な小山内。それでも普段はあまり感じなかった冷たさを、優美子は初めて彼女に抱いた。
「優美子さん、まず肛門のチェックをするんですが……。肛門を使ったセックスは経験済みですか?」
「ッッ!」
 そう言う行為がある事は知っている。でも排泄を連想させる穴でセックスなど、潔癖症の優美子には考えられない行為だ。
(そんなの、ある訳無いじゃない!)
 優美子は黙り、ギリリと唇を噛み締めた。そうでもしないと、こんな状況下でも構わず、新城を非難してしまいそうだった。
「あれ? この質問の意味が解りませんか? その汚い穴にチンポ挿入れた事があるか……って訊いているんです」
「何をッ! …………恥知らずッ!」
 新城の余りの不躾な問いにカッとなり、優美子は罵倒した。批難された本人は素っ頓狂な顔で、おやおやと頭を掻く。しかし、新城が物怖じた様子は全く無かった。
「気丈と言うか、何と言うか。随分、神経が図太くいらっしゃる」
 新城の視線が、目から外され体へと舐めるように落ちていく。その眼球の動きに、優美子はヒヤリと身震いした。
 乳首も乳房も性器も肛門まで、体の全てを新城の眼前に晒しているのだ。それも脚を大きく開ききった下品な格好で。
 不妊症で苦しんでいた自分が、そうで無いと知らされた。そして今、皮肉にもレイプで妊娠の危機だなんて。
「貴方に人としての情はないの?」
 それでも、優美子は頑なに新城を拒んだ。抵抗も逃走も叶わない中でも、自分の貞操だけは守りたかった。何でもいい。新城が諦めてくれさえすれば。
 優美子の願いとは裏腹に、新城の顔はやはり崩れない。むしろ声には高揚さえうかがえる。
「情ならありますよ? だから、我が子は自分で出産の手術をするんです。誰よりも先に我が子に触れる。充分じゃないですか」
「そんなの……!」
「はあ、優美子さん、貴女はお喋りですね。五月蝿くてたまりませんよ。小山内さん」
「はい」
 嘆息する新城が、小山内にあごで指図する。小山内は器械卓子から銀に光る器具を手にとり、優美子に近付く。
 開口器だ。
 喚く優美子の口にそれを押し込み、“動くと挟みますよ”と無機質な声で忠告した。再び怯える優美子を無視し、端のつまみの調節を始める。
「お似合いですよ」
「あ……あ、あ……」
 カチャリと次は新城が器具を取り、優美子の無防備な口内から舌を引きずり出した。ウグゥゥと呻くと、舌は新城の指の中で震えた。その舌に新城が持った刃先の丸いハサミのような物があてがわれる。
「ヒッ、――ッッ!」
 バチンと舌が舌鉗子に挟まれた。痛かったのは一瞬だったが、直ぐに口内が血の味で満たされる。
「ぁ……がぁぁ、あ、あぁぁぁ!」
「血は出ていませんから安心して下さい。舌先が鬱血して出血したような味覚になるだけですから」
 鉄の味覚と溢れ出す唾液が、出血を錯覚させる。そこに空を切る音、ビチンッと乾いた破裂音が響き、女の金切り声が後を続いた。
「へひぃぃぃぃ!」
 優美子の悲鳴だ。体には無数の線が集まって、赤いラインが出来ている。優美子の体を鞭が襲った痕だ。小山内の手には、優美子を拘束する物と同じ黒革で出来たバラ鞭が握られている。
「躾は初めが肝心って、よく言いますから……。歯向かったり、口答えをしたらこうなるって体で覚えておいて下さい」
 新城が言い終わるや否や、小山内はまた鞭を振るい始めた。
 打擲を胸部に与えられると、切り裂かれるような鋭い痛みに、ふくよかな乳房が揺れ、なぜか乳首は、はち切れんばかりに固くしこり屹立する。
 それを新城が鼻白み、揶揄した。
「乳首立たせている所すみませんが、もう一度質問です。肛門は使用済みですか?」
 今度は新城の平手が、優美子の局部を打ち据える。重い一撃に脳天を駆け上がる激痛。一気に熱を持ち始め、ジンジンと大陰唇が腫れ上がる。同時に舌鉗子がブラブラと揺れ、舌が引き抜けてしまいそうだった。
「“はい”ですか?“いいえ”ですか?」
 ビタンッ! ビタンッ! ビタンッ! 
(いっ痛い! 嫌ッ! やめて! やめてぇぇ!)
「ひひへ! ひぃへ! がゃ、ひぃぃぃ!」
「返事は一度ですよ」
 新城は優美子に訓示し、最後に思い切り張り手で擲った。
 男の分厚い手が濡れる。ジョボジョボボボボォーと痛みで優美子が失禁してしまったのだ。本人は息を上げ、白目を剥いて失神してしまっていた。
 それから優美子が目を覚ましたのは数分後、小山内の鞭が再び胴体に向けられた時だった。
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